*
月日は流れて、僕は高校生になった。あれから変わらず、リュウくんの隣に僕がいた。
僕は帰宅部で、リュウくんはサッカー部に所属した。
あの時みたいに話したり、遊んだり、一緒に勉強したり。あの時と何も変わることなく過ごした。
何も変わらない、そんな幸せは永遠に続くことを、信じていた。
入学して間もないある日、リュウくんは学校を休んだ。
彼が体調を崩すなんて珍しいなぁ。そんなことを思いながら、ぽつんと空いた席を眺めた。
次の日、リュウくんは黒髪から明るい茶色に髪を染めていた登校した。すぐに出くわした先生に怒られていたが、知らんぷりで通り過ぎて行く。
それと、僕のことも何となく避けている気がした。
またその次の日、彼は学校に来なかった。変だと思った僕は、彼の家を訪ねた。しかし、何度呼び鈴を押しても、彼が出てくることはなかった。
「何か、用?」
丁度諦めかけていた時、後ろからした聞き慣れたその声に、振り返ると私服姿のリュウくんが立っていた。
彼は僕の顔を「やっぱり」という風に見るなり、ため息を吐いて脇を通りすぎようとする。その腕を引っ張り、止めようと試みるが強い力で簡単に振り払われた。
「帰れよ」
舌打ちの後に聞こえた言葉に、聞こえなかったふりをしてとぼけたように笑ってみせる。リュウくんが好きだって、言ってくれた笑顔で。
「リュウくん、…どうかした?最近ちょっと可笑しいよ」
「…うっせえな!オマエには関係ねえだろ!」
初めて聞いた冷たく突き放す言葉に動揺を隠せなかった。何か言わなきゃ、焦ってもその目の鋭さに怯えて体が震えるだけ。今近づくのはマズいと、直感して彼の元から黙って逃げるように走り去った。
走っても、走ってもあの言葉が頭を回る。胸にポッカリと、大きな穴が空いたみたい。たまらなくて、胸のあたりをぎゅっと抑えて道端に座り込んでしまった。
僕が追いかけていた背中が消えるのが、怖い。
目の前の光が、急に無くなったみたい。
そう思うと息が苦しくなってくる。無意識に僕が助けてと乞う相手は、また彼だった。
ねえ待ってよ、リュウくん。
お願いだから、僕を置いていかないで。
*
家に帰るとすぐに滅多にならないケータイが鳴った。何だろうと思い手に取ると、電話のようだった。
相手は―――
『…お前、リュウのダチだろ?』
聞こえてきたのは、誰かの声。リュウくんの声ではなかった。もう一度ケータイを耳から離し、確認してみてもやはりリュウくんの番号で間違いなかった。
異常な状況に戸惑いながらも、小さな声で「はい」と返事をした。
『リュウが困ってるみたいなんだよ。助けてやってくんねえか?』
「…!」
ケータイを持つ手が震えた。
多分、これは神様がくれた最後のチャンス。
迷わず、僕は返事をする。